睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、寝ている間に一時的に呼吸が止まる疾患です。睡眠中、平均して1時間に5回以上起こり、それぞれ呼吸停止が10秒以上認められる場合には、この疾患の可能性があります。代表的な症状は“いびき”で、眠りが浅くなるため、日中に強い眠気や倦怠感を生じることがあります。
習慣的に“いびき”をかいている方の半数程度に睡眠時無呼吸症候群が認められるという報告もあります。放置すると、血管・心臓・脳に大きな負担がかかり、高血圧症や狭心症、心筋梗塞、脳卒中などを合併することもあります。できるだけ早く診断し、治療をはじめることが大切です。
睡眠時無呼吸は、高血圧の原因になる可能性があり、睡眠時無呼吸症候群の患者様の半数に高血圧が認められ、高血圧患者様の3割に睡眠時無呼吸症候群が認められるという報告もあります。また、薬物治療に抵抗性のある高血圧症に、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性も指摘されています。
睡眠時無呼吸症候群は脳卒中の発症リスクが高まるとされています。とくに50歳以上では、脳卒中および死亡リスクが閉塞性でない方の約2倍という報告もあります。
睡眠時無呼吸症候群は不整脈を合併することが多く、無呼吸の増加や低酸素血症の悪化に伴い、合併頻度も高まります。とくに夜間の不整脈は、半数近くの閉塞性患者様に認められ、重症度では、その発症リスクが2〜4倍に高まるとされています。
睡眠時無呼吸症候群は狭心症を合併することが多く、睡眠時無呼吸症候群のない方の約2倍といわれています。
睡眠時無呼吸症候群の方は糖尿病になる確率が1.6倍高くなるといわれております。
睡眠時無呼吸症候群は大きく分けて2種類あります。一つは、呼吸運動は保たれているものの、上気道のどこかの閉塞によって、鼻・口の気流が停止する「閉塞性」の睡眠時無呼吸です。もう一つは脳の問題で、呼吸運動そのものが停止する「中枢性」の睡眠時無呼吸です。
「閉塞性」は世界的にも有病率が高く、様々な病気と関連することがわかっています。睡眠時無呼吸症候群は、男性は30~60代によくみられ、女性は更年期以降に多く、閉経によるホルモンバランスの変化も一因とされています。
「閉塞性」の原因には鼻から喉頭(のどぼとけ)にかけての狭窄があります。狭くなった気道のすき間を空気が通ることで“いびき”が生じます。いびきの要因は、肥満による首や喉(のど)まわりの脂肪沈着、あごが十分発育していない小顎症(しょうがくしょう)、扁桃肥大、舌・口蓋垂(こうがいすい)・軟口蓋(なんこうがい)による狭窄など、解剖学的なものがあります。また、加齢や睡眠時における呼吸の調節能力の低下など、機能的な要因も関連します。
就寝時
起床時
日中
検査はご自宅でできる簡易検査と、専門の医療機関に一泊して行う精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査:PSG検査)があります。簡易検査は手指や鼻下にセンサーを装着し、睡眠中の呼吸などを調べます。精密検査は脳波計や心電計などを用いて行う詳細な検査です。簡易検査でも睡眠時無呼吸症候群の診断は可能ですが、後述するCPAP療法は重症以上でないと対象になりません。そのため精密検査を実施し、しっかりと評価を行います。
治療には対症療法と根治療法があり、症状の程度や原因に応じて選択します。代表的な対症療法には、CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)とマウスピース療法があります。
CPAP(シーパップ)療法
CPAP療法は中等度から重症度に有効な治療法です。睡眠時無呼吸症候群ではもっとも標準的で効果のある治療として位置づけられています。睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を開存させて治療します。睡眠中の無呼吸・いびきが減少し、眠気の改善や血圧を下げる効果も期待できます。
マウスピース療法
マウスピース療法は軽症度に適した治療法です。寝る際にマウスピースを装着し、下あごを前方に出すように固定することで、上気道を広く保ち、無呼吸やいびきの発生を防ぎます。歯科での作成になるため、紹介します。
根治療法
原因が肥満の場合は減量が根治療法であり、対症療法を組み合わせて進めます。あごの小ささや扁桃肥大などが原因の場合は、手術を検討します。鼻疾患を有している場合、マウスピースやCPAP療法で十分な効果が得られないことがあります。このような場合も手術が検討されます。
このほかに、口呼吸の予防・治療に有効な口腔筋機能療法や、寝る向きを矯正する体位療法などが有効なこともあります。
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