くびの病気(超音波検査)
くびの病気(超音波検査)

首の両側には多くのリンパ節があります。その部分が腫れる病気を総称して頸部リンパ節腫脹といいます。頸部のリンパ節が腫脹する疾患は多くあり、炎症または腫瘍によるものが代表的です。かぜなどにより細菌やウイルスが鼻やのどに感染すると、そこから体内に侵入します。そこで首にあるリンパ節が働き、細菌やウイルスが全身に広がらないように食い止めます。
その結果、リンパ節が腫れて痛みが出てきます。この状態を頸部リンパ節炎といいます。リンパ節炎はリンパ節腫脹の原因として頻度が高く、腫れた部位の痛みを伴いますが、抗菌薬や消炎鎮痛薬の投与により通常は1〜2週間でよくなります。ただし、他にもリンパ節が腫れる原因はいろいろあり、腫れが長引く場合、血液検査や超音波検査やCT検査などの精密検査が必要です。
腫瘍のうち、悪性リンパ腫はリンパ節そのものが悪性化する疾患です。病巣が頸部だけに限局しているのか、他の部位に及んでいるのかをまず診断した上で、抗がん剤などによる治療を行います。リンパ節に他の部位のがんが転移してリンパ節が腫脹するリンパ節転移が疑わしい場合は、がんがどこにあるか内視鏡を用いながら検査します。
唾液は両側の耳の下にある耳下腺や顎の下部にある顎下腺などの唾液腺でつくられ、管を通って口の中へ分泌されます。この管の中のどこかで唾液の成分から生じた結晶が塊(唾石)となり、次第に大きくなって管を塞ぐようになった状態を唾石症といいます。唾石は唾液腺の中でも顎下腺に最も多く発生します。
通常食事をしようとすると唾液が多く分泌されますが、唾石があると管の途中で唾液が流れないため、腺が腫れて痛みが起こります。顎下腺の場合は食事の際に腺が腫れます。まれに自然に排出されることもありますが、多くは手術により管を切って唾石を摘出するか、顎下腺ごと摘出します。
顎の下にしこりが現れます。多くの場合は押しても痛みはありません。リンパの腫れの場合もありますが、顎下腺の中にできた腫瘍の場合、40~50%ほどでがんが発見されるため、超音波やMRIなどの画像検査、および腫瘍の細胞を一部採取して検査をすることが大切です。治療は基本的に手術による摘出になります。
耳の前や耳の下にしこりが現れます。比較的若年女性では多形腺腫という良性腫瘍が多く、中年以降で喫煙歴のある男性ではワルチン腫瘍が多くみられます。まれにがんが発見されることもあり、超音波やMRIなどの画像検査に加え、腫瘍の細胞を一部採取して検査を行うことが大切です。治療は基本的に手術での摘出が行われます。
首の前側の付け根に柔らかい、または弾力のあるしこりがある場合、甲状腺腫瘍を疑います。まずは血液検査や画像検査を行い、必要に応じて細胞検査を行います。比較的小さく、画像検査で悪性を疑わなければ経過観察が可能です。まず甲状腺がんを疑うかどうかを判断することが大切です。
片側または両側の耳の前から下側の腫れ、熱感、痛みが現れます。耳下腺は唾液を作る工場で、唾液は口の中に分泌されます。口の中からウイルスや細菌が逆行性に耳下腺に感染することで症状が出現します。おたふく(流行性耳下腺炎)はその一種です。
また、小児期にこの症状を繰り返す反復性耳下腺炎というものがあります。まずは受診をして診断し、治療を開始することが重要です。
幼稚園年長〜学童期の小児に多く、片側または両側の耳の前から下側の腫れ、発熱、熱感、痛みなどの症状が現れます。ムンプスウイルスが原因で感染力が強いため、通学は最低5日間は禁止されます。また、まれに聴力障害や髄膜炎を起こすことがあります。
成人で感染すると、稀に睾丸炎や卵巣炎、膵炎などの重症合併症を起こすことが知られています。抗菌薬は無効で、耳下腺の腫れや発熱が落ち着くまで自宅安静が基本です。
顔面神経麻痺は、表情をつくる筋肉を支配する神経が障害され、口角が下がる、眉が動かせない、まぶたが閉じにくいなど、顔の片側に力が入らなくなる病気です。食事や会話時に口からこぼれやすくなり、目の乾燥も起こります。原因不明のベル麻痺が大半ですが、帯状疱疹ウイルス感染によるラムゼイ・ハント症候群では耳の痛みや発疹、難聴やめまいを伴います。
治療は発症後できるだけ早くステロイドを用い、必要に応じて抗ウイルス薬を使用します。ベル麻痺では約9割、ラムゼイ・ハント症候群は約7割が半年以内に日常生活に支障ないレベルまで改善します。重症例では高用量のステロイド治療や外科的治療を検討することもあります。
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